春、新人が入ってくるのは企業だけではありません。
4月の開幕に向けて、プロ野球界でも新人の話題がメディアを賑わせています。
そして、プロ野球界にも新人研修なるものがあり、企業よりも一足早く、3月4日に開催されました。
・アンチドーピング運動について
・税の意義と役割
・薬物乱用防止について
・暴力団の実態と手口
・話し方、インタビューへの対応
の6講義などが、例年のテーマです。
今年の「先輩プロ野球選手からプロ野球の後輩へ」の講義では、阪神などで44歳まで現役を続けた金本知憲氏が登壇し、
「天性のものだけでは長続きしない。しっかり地道に努力した人が長くやる。何くそと思ってやらないと。」
と新人選手にエールを送りました。
(写真は昨年の様子)
「話し方、インタビューへの対応」では、元ニッポン放送アナウンサーの深沢弘氏が講師となり、模擬インタビュー等を行うものでした。
その深沢氏のフィードバックから、指導育成において見習うべき点と反面教師としたい点の両面を垣間見ることができました。
「うまいな」と感じたのは、昨年甲子園で大活躍し、大阪桐蔭高校から阪神タイガースへ入団した藤浪晋太郎投手の模擬インタビューへのフィードバックです。
「テレビのインタビューを見た時から言いたかったんだけど、口の開きが少し小さいね。
言葉がはっきりしないよ。口を大きく開けて。(受け答えは)いいことを言っているんだから」
“口の開きの小ささ”を指摘するだけでなく、「いいことを言っているんだから」と良い点も添えることで、言われた藤浪選手は改善へ前向きさを持てたことだと思う。
単に褒め言葉を付け加えているのではない。
「こうすることによって、君の良いところがさらに活きるよ」
という強みを伸ばす観点からの指導は本人の納得感を得やすいものです。
さらに、「テレビのインタビューを見た時から言いたかったんだけど」という一言も効果的。
この一言は、「いつも気にかけているよ」というサインにもなり、言われる側からすると非常に嬉しく、信頼関係を築くことにつながります。
もちろんこれが、「いつも見ているけど、失敗ばかりしているね」となると失敗を気にして萎縮してしまうが、先述のとおり、良い点にも目を向けてもらっているということが重要です。
褒める、叱るはできるだけその場で伝えたいものですが、面談等で「あの時の仕事ぶりは良かったね」と出来るだけ具体的に振り返ってもらえることも、本人の意欲を高めるには効果的である。
一方で、気になる一言もありました。
同じく、藤浪選手に対して、
「大谷君は明るいんだけど、それに比べると表情が暗い」
「大谷君は明るいんだけど」この一言、要りますかね?
私も報道で見ただけだから、その前後関係は曖昧ではあるが、他者との比較しての叱責は本人の意欲を下げることは間違いないでしょう。
競争社会のプロスポーツの世界では、他社との比較は当たり前のことかもしれないが、あえて他人と人格にも関わることを比べる必要性はありません。
これらのことは、当然、これから新社会人を迎える企業においても当てはまることです。
「そんな細かいことまで考えていたら、甘やかすことになる」
そうとも捉えられるかもしれないが、新しい社会に踏み出す新社会人の心は思いのほか繊細なもの。
そして、マネジメントは細かいことの積み重ね。
指導育成においても。小さな言い回しや着目する視点を変えることで、新社会人の仕事、そして成長への意欲が高め、組織全体の成長へとつなげていくことが大切だ。