計画とはスケジューリングではない。
では何なのか?
計画とはシミュレーションです。
もし、「仕事の段取りが悪い」と言われることがあったら、このように考えて行動すると上手くいくかもしれません。
スケジューリングとシミュレーションの違いは概念的なものなので、違わないと感じる方も多いでしょう。
だからこそ、あえて違いに着目すると、計画の精度が上がります。
単純に言うと、スケジューリングは「何を」「いつ」やるかを決めること。
シミュレーションは、「何を」「いつ」「どのように」やるかを決め、それをやった時の「言動の過不足を想定」することだと私は考えています。
自分の計画が、予定表に書けるくらいのことで収まっていたら、それはまだスケジューリングの範疇でしょう。
「仕事の段取り」と書きましたが、旅行なんかでも同じことが言えます。
私は旅行に行くと決まったら、まずメインの目的地を決めて、その地域のガイドブックを読み通します。
その上で、あらかたの工程表を作ります。
ここまでがスケジューリングです。
その後、同じ目的地・宿泊施設を利用した人のブログを検索して、その時の状況を把握します。
時間帯、楽しかったこと、失敗したこと、混雑具合、料理のボリューム、サービス、移動時間など。
googleのクチコミも参考にしますが、ブログの方が写真がありイメージがしやすいのと、似たような人員構成(子連れ、親子三代、友達同士など)の人の感想か同課がわかるので、参考になります。
あ、もちろんvlogも参考にします。
動画の方が情報量が多い気がしますが、意外とブログの方が欲しい情報が得やすいです。
tiktokの店舗紹介と同じなのですが、動画情報って編集者が動画を面白くすることに重心を置いているため、マイナス情報が残りにくいんですよね。
ブログなどでは、オープンにされていないサービス情報も見つかったりします。
例えばハウステンボスの馬車。
あの窓口って、公式HPには公開されていないんですよね。
なんか携帯電話みたいな番号があって、そこにかけるとつながります。
余談ですが、私も誰かしらのブログでたまたま見つけ、予約の連絡をしたら、馬車のスタッフさんが驚いていました。
馬は気温によって動けない日もあるので、オープンに集客や予約ができないとのことで、元気な日に流しで集客をするそうです。
だからブログなどは、10~20記事くらいは参考にします。
あとは自分の経験と同伴者の嗜好を加味して、再度計画を立てます。
この時には、どこで混雑しそうか、それをどう回避すればよいか。
食事はどこがベストで、どのタイミングでトイレが必要になりそうか。
事前に施設の人に確認しておくべきことはないか。
臨時休業はないか?
もし雨が降ったらどうする? もし渋滞に巻き込まれたら車で何をする?
もし、思いのほか早く観光が終わったら、他にどこに寄るか?
この楽しみ方をするには、何を持っていくべきか?
などなどで、意外と大事なのが「朝ごはんは何時にしてもらうか」ですね。
夕飯は、予約時に決めて置くことが多いと思いますが、朝食は決めないことが多いですね。
でも、そうなるとグダグダな2日目の始まりになってしまいます。
分単位で旅程を組むと、朝食の15分のズレが1日に大きな影響を及ぼします。
「言動の過不足」と書きましたが、過不足です。
無くて後悔するものもあれば、持っていき過ぎて後悔するものもあります。
そして、言動も同じ。
同伴者に伝え忘れて失敗することは多いでしょうし、伝え過ぎて面白さが半減することも。
これがシミュレーションです。
実際には、どちらかというと、失敗のシミュレーションが多いですね。
混んでたらどうしよう?なかったらどうしよう?雨ならどうしよう?やってなかったらどうしよう?と。
「そんなに調べたら、実際に行ったときに楽しくなくない?」と聞かれることがありますが、大丈夫です。
3回くらいその旅行を楽しんだ気分になれています。
「旅行は想定外を楽しむものだ」という方もいますが、想定外って、想定があっての初めて想定外になります。
想定していないと想定外の楽しみはラッキーで終わりますが、想定している人にとっては「そのラッキーは事前に調べれば誰でも知っているよ」と言えます。
そんな中でも起きた良い想定外は同じように嬉しですし、悪い想定外も次回のシミュレーションの肥やしになります。
と旅行でのたとえ話が長くなっていしまったようですが、仕事でも全く同じです。
計画を立てるときにスケジューリングで終わっているか、シミュレーションをしているか。
それで仕事の質が変わります。
ポイントは、3つ。
・ブログを活用する
・失敗を想定する
・悪い想定外も次回の肥やしになる
ブログを活用するとは、他者の経験を活用するとおいうこと。
新人の人が仕事任されたとき、意気込んで自分の力だけでやろうと思いますが、
「先輩この仕事で気を付けた方が良いことありますか」
「ちょっとやってみたのですが、こんな感じで良さそうですか?」
など早い段階で確認した方が、怪我が小さくて済みます。
というより、怪我をしません。
「自分の力でやらないと!」と勘違いする新人もいますが、相談・確認も仕事の一部なので、問題ありません。
新人にシミュレーションの材料となるだけの経験がないことは、言わずもがななのです。
次の失敗を想定するというのは、シミュレーションの醍醐味ですね。
人間の脳って、楽観的に考えてしまう性質があって、意識しないと失敗がイメージできないんですね。
これは、楽観性バイアスと言って、うまく付き合えばストレスケアにもなるのですが、「うまく付き合えば」です。
実際の仕事で「自分の想定ではうまくいくと思ていました」と言って失敗する人はたくさんいます。
でも、本人も回りも気づいているんです。
「その失敗の原因って、想定できたんじゃない?」と。
そう、失敗の原因はだいたい失敗の想定不足なんです。
だって、ほとんどの人が、人類未経験の仕事なんてやってないんですもん。
初めてやってみる、会社を上げての挑戦、業界初の試みっていうことはあると思います。
でも、それだって既存の知の組み合わせで、誰も想定できないことではないんですよね。
成功の想定があるから試みるわけであって。
そんな中で失敗を想定して辞めろという悲観的なことを言うのではありません。
結果の失敗を怖がるのではなく、過程の失敗を想定して(それを潰して)取り組むことが大事ということです。
おっと、ちょっと意気込んでしまいましたが、心配いりません。
「仕事の段取りが悪い」と言われる人には、そんな大それた仕事は回ってこないので。
とは言え、意気込みついでに、しっかりシミューレションした上での結果の失敗は仕方ないですよね。
どこまでも想定しきれないことはありますし。
ただ勘違いすべきでないのこの失敗は無駄ではないということ。
本気の失敗は次回のシミュレーションの材料となるということです。
これが最後の「悪い想定外も次回の肥やしになる」というポイントです。
「失敗は成功の母」といった誰でもわかっている格言を言いたいのではありません。
管理職の方にこういった話をしていると、「そういうシミュレーションができる奴は、初めから仕事ができる奴なんだよ」といった声も聞きます。
はい、全くその通りなのですが、このシミュレーション能力っていうのは、意識すると、その積み重ねで後天的に見につくものなんですね。
にもかかわらず、本人の自覚不足か、上司の教育不足で、
・都度失敗のシミュレーションを行わない
・失敗したときに次回のシミュレーション材料にしない
という人が多いことが非常にもったいない。
これは、何かしらの成功を「あの時もうまくいったから、今回も何とかなるでしょ」と楽観性バイアスが過剰に働いているときです。
実際には、同じことを前回と同じようにやって失敗することは多くあります。
市場も、人も、仕組みも、常に変化しているので。
補足的に書きますが、管理職の人で「あの時もうまくいったから、今回も何とかなるでしょ」と思っている人がいたら、ヤバいです。
何とかなっているのではなく、何とかしてくれている周囲のサポートがあるだけです。
その管理職の人は、自分のマネジメント能力と勘違いしているかもしれませんが、そんなことはありません。
こういう人はごまかす力、笑いにする力も持っているので、気づいていないことが多いのですが、周りは結構不満をつならせている人がいると思いますよ。
マネジメントとは、想定と事前対応です。
人財教育もマネジメントの一環。
何も知らないと仕事に支障が出るから、必要なことを教えるのです。
最後に、稲森和夫氏のこの言葉で締めさせていただきます。
「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」