日記というか、ひとり言。

散歩をしていて、スポーツ見ていて、映画を見ていて、漫画を読んでいて思ったこと。

もしもプロ野球界が1つの会社だったなら。

「母さん、おれ、『株式会社NPB』を受けることに決めたよ。

人事の人も10月22日に合格通知くれるって言ってたし。

いや、もちろん絶対というわけではないんだけどさ。

きっと、どこかの部署が声かけてくれると思うんだ。

実力主義で、歩合制みたいな感じもあるけど、実績を積めば何億も稼ぐことだって夢じゃないんだ。」





『株式会社NPB』

この会社は、採用決定=配属先決定という面白い仕組みを取っている。

全部署が同じ事業を営んでいるのだが、完全な独立採算制。

故に、事業戦略・組織戦略も個別に策定されている。

もちろん採用活動も部署ごとであるため、採用決定=配属先決定という形になるのだ。



この会社に入りたいと思う者は、入社希望書を提出する。

すると、各部署の人事が年1回の採用決定の日に、採用したい人材を指名するという仕組みだ。

もちろん、採用の見込みがあるのは、以前からリクルーターに声をかけられていた人材に限るものだ。

基本的には順番に指名していくが、「この人材だけはどうしても欲しい」という人材一人については、一斉に発表し、重複した場合は抽選で決めるというのも面白い。

もちろん、優秀と思われる人材は取り合いにはなるが、部署ごとの組織戦略と抱える課題は異なるため、偏りすぎることはない。



各部署は、ほぼ別会社のようではあるが、定期的に全12部署のトップが集まる機会もある。

全体でどのように売上を上げていくか、どのように顧客層を広げていくかなどを話し合うという。

組織戦略上、人員構成を変えたい場合は、部署間異動も行われる。

長く勤めた社員には、自己申告で希望部署に異動できる制度もある。

また、労働組合は1つであり、部署を越えての付き合いも多いようだ。



実力主義」との言葉にあったが、それは採用時から既に始まっている。

採用が決定した順番がそのまま新人の格付けになっているのだ。

その格付けは入社前までの実績や素質で決められる。

そして、初任給にも差が出る。(この会社では入社時に契約金ももらえる)

ただし、入社後のそれぞれ活躍によりその格付けが逆転することもあり、自分の働きしだいで、給与も大幅に上がることもある。

会社全体として、インセンティブ制度も充実しており、様々な人材にスポットライトがあたるよう考えられている。



活躍次第では、海外の同業他社からヘッドハンティングされることもあり、夢はさらに広がる。



しかし、活躍の場である営業現場に出ることができるのは各部署70名のうち、20名ほど。

花形部署に入れば注目度も高いが、その分競争も激しい。

春の合宿研修や社内プロジェクトで実績をださなければ、現場には出ることができない。

現場に出ても、そこで結果を出せなければ、すぐに研修や社内業務に回されてしまう。



学生時代は負けん気の強さが売りだった社員も、数年立つと競争意欲を維持するだけでも難しくなってくる。

中堅社員からはこんな愚痴も聞こえてくる。

「お前の部署はいいよな。現場に出るチャンスが多くて。うちの部はなまじ予算が多いから、他部署からエース社員をすぐ引っ張ってくるんだよ。即戦力、即戦力って、中で頑張ってる奴がいることも見て欲しいよ。」



もちろんいつまでも研修で面倒を見てくれるわけではない。

自分の力を十分に発揮できず、解雇となる人材も少なくないのが実態だ。

運がよければ、他部署が拾ってくれることもあるが、給与はグッと下がるそうだ。

ちなみに、退職金はない。



売っているものは、夢と刺激。

野球というスポーツを通じて、見る人に夢と刺激を与える、究極のエンターテイメント会社である。


東京ドーム




そう、『株式会社NPB』とは日本プロ野球界を会社に喩えて表現したものです。

もちろん、実際にはそれぞれが独立した組織ではありますが、選手会の動きやトレード、そして球団代表同士の関係を見ていると、1つの会社のようにも思えてきます。

(実際に株式会社NPBエンタープライズでは、「日本代表」を事業として運営していますが)



そして、各球団が部署だとすると、それぞれに組織戦略があります。



10月22日に行われたドラフト会議。

まさに各球団の組織戦略の一端が垣間見られる瞬間でした。



現状の穴を埋めるべく、社会人から即戦力補強をすることも組織戦略の一つです。

一方で、将来の人員構成を想定して、高校生の有望選手を指名し、育てるという戦略を取ることもあるでしょう。

ソフトバンクなんかは、注目度No.1だった県岐阜商の高橋投手を初めとし、全員が高校生。

「現戦力に穴がなし」とも捉えられ、他球団からすると、羨ましい限りですね。





さて、ここで垣間見られた「将来、どのような組織を作りたいか」「そのためにどのような人材を補強したいか」「どのような人材に育てていきたいか」といったことはスポーツの世界に限る話ではありません。

企業においても常に考えられていることであることは、言わずもがなです。



これらの組織戦略は人事や経営戦略室が考えていることでしょうが、それは会社全体のこと。

思うに、部署ごとにも考えていくべきことではないでしょうか。



プロ野球が1つの会社のように表現したのは完全に私の妄想ですが、同じ事業を行っているプロ野球各球団でさえ、組織戦略は大きく異なってきます。

であれば、複数事業部を持っている会社であれば、事業部ごとに組織戦略を策定するのが当然とも考えられます。



しかし実際には、そうではありません。

いや、会社としての組織戦略を描いている企業自体が少ないとも言えます。



事業部ごとに人事部を作るというのではなく、事業部長や部長に、組織戦略を描く思考を持ってもらうのです。



事業運営をどうするかを考えるときに、実行の担い手である人や組織についての戦略を考えることは、言ってしまえば当然のことなのですが、なかなかそれができていない。

他社との差別化が図れれば、良いビジネスモデルが作れれば、人や組織は勝手に回ると考えている経営者は少なくありませんが、決してそんなことはありません。



経営戦略には、事業戦略と組織戦略の両輪が必要です。

そして、繰り返しになりますが、複数事業を営むのであれば、複数の組織戦略が存在することは至極当然のことでもあります。



他社との差別化を図ろうとして、いつの間にか事業が多角化している企業が少なくありません。

一時期、分社化してスリム化していく傾向もありましたが、昨今では管理業務等の一本化することによる効率化などを目的として、企業・事業統合がまた増えてきました。

景気の波に左右されないための事業ポートフォリオとしての複数事業という面もあるでしょう。



つまり、1つのヘッドで組織を運営していくことが難しくなっているのです。

事業部に戦略があること、言うなれば、事業部長や部長が経営者となっていくことが求められています。

各部署のトップが経営者となる(としての意識を持つ)ことで、各部署の事業と組織が回り、全体としての相乗効果も図られます。





妄想劇場『株式会社NPB』。

お付き合いいただき、ありがとうございました。



今年もたくさんの将来有望な選手がドラフト会議で指名を受けました。

各チームの戦略にバッチリとはまり、多くの選手が活躍することで、たくさんの興奮を与えてくれることを心から願っています。


ドラフト