「この自己申告制度って機能していますか?」
と、ある企業で質問したところ、
「いや、機能していません。社員からの評判も良くないです。」
という答えが返ってきました。
“ある企業”と書きましたが、多くの企業でこういう答えが返ってきます。
むしろ、「社員からの評判」という答えが帰ってきただけ良いでしょう。
「わかりません、社員はどう考えているんですかね?」
なんて言う人事の方も。
長期的な視点に立って自分のキャリアを考え、部署異動を希望する『自己申告制度』。
同時に、社員の意欲調査の機会ともなります。
一方で、希望を出したとしても、それに応えられないという組織が大半でしょう。
「希望先の部署では、人手が足りている」「現所属部署で、人を出したがらない」と言った組織的な背景だけでなく、「部署異動を希望する人ほどローパフォーマー」という実態とイメージの問題があります。
もちろん上手く運用できている企業もあります。
FA制度のようにして、現所属部署の上司に知られないような時間帯に面談をやるなど気を遣いながら。
ただ、冒頭の会話で問題なのは、「うまくいっていない」「社員からも評判が良くない」という認識がありながら、続けていたことです。
「前からこの仕組みだったから」「自己申告制度があるのは今では普通だから」と感覚のうちに、思考停止に陥ってしまったことが感じられます。
(この企業は、このミーティングで自己申告制度のフォーマット・運用を変えることをすぐに決断されました。)
この問題意識は、『自己申告制度』に限った話ではありません。
「うまくいかなければ、違う事をやる」
こうやって文字に起こすと当たり前のことなのですが、それがなかなかできていない事柄が多いのが実態です。
特に人事の世界は、一度一般的になった考えというのは、長く慣習として残っているように感じます。
「ビジネスの変化は進むのに、社内制度はあまり変わっていない」ということが。
目標管理制度による評価然り、朝礼などの文化も然り。
一方で、先日あるベンチャー企業の全社会議に参加してきました。
月1回、全社員が集まり、各部署の進捗・トピック報告を共有し、食事会になだれ込むというこの会議。
よる、7時半開始だというのに、参加者全員のエネルギーに溢れている場が印象的でした。
その中のコーナーで、『Start、Keep、Stop』というものがありました。
新サービス、社員の行動、制度などについて、
Start = 新しく始めること
Keep = 続けること
そして、
Stop = やめること
を部署のことと全社のこととで共有します。
このSTOPについて考える文化。
あるようでいて、なかなかないもので、かつ進化する上で非常に有効なものです。
新しいことをはじめようにも、時間や人は有限です。
そうなると、どうしても何かを止めなくてはいけないことが出てきます。
もちろん、AND思考で「あれと、これを一緒にやっちゃおう」っていうのもありです。
ただ、それが無駄なことの場合は話が別。
無駄なことを続けるっていうのは、一番エネルギーが下がっちゃうんですよね。
そして、大事なのは、都度都度「これって意味があるのかな?」「ねらった効果を出せているのかな?」と考えること。
無駄なことを止めずに続けているときというのは、考えることを止めてしまっているってことです。