「あんたはどう思うのか?」
「一言で言って何だ?」
「A00(エーゼロゼロ)は?」
こんな質問を浴びせられることが日常的であったのが、かつてのホンダでした。
A00とは基本要件、つまり目的のこと。
こういった質問が社内のいたるところで交わされることによって、自分のやっていることの要点、目的、コンセプトなどを自分の言葉で言えるように訓練されていったそうです。
「上司がこう言っていました」と言おうものなら「お前は子供の使いだな。」と返される。
「本に書いてあった」「学校で習った」と言えば「評論家なんかいらねえよ」と返される。
どんな事にも自分なりの見方を持たせることで、ホンダはオリジナリティある車を数多く輩出してきました。
"肩書きのない本質議論”ワイガヤと並び、これらの質問はホンダの文化を表したものでした。
「考える社員を育てたい。」
そういったご要望は多いのですが、単発の研修を受講させても効果はありません。
そういった力は一朝一夕に身に付くものではないためです。
重要なのは職場で考える機会を常時持つことで、その鍵となるのが上司の質問力です。
冒頭のホンダの事例はその1つですが、皆様の職場では上司が部下に考えさせる質問をしているでしょうか?
「君はどう思う?」
コーチングという言葉が一時期流行り、部下の意見を聞く質問をされる方は多いかもしれません。
ただ、この質問だけでは考える力は高まりません。
むしろ、質問をしに来た部下にこの質問で返すと、ストレスを生んでしまうでしょう。
大事なのは、視野・考えを広げる質問。
「社長ならどう考えるかな?」
「C案はないかな?」
「3ヶ月後ならどういう手が考えられる?」
「AとBを同時にやる方法はないかな?」
「半分の時間でやるとしたらどうする?」
「3つでまとめると?」
「小学生に伝えるつもりで説明してみて?」
など、考える視点を広げる、切り替えさせるような質問が重要です。
たとえ部下の提案が妥当だとしても、もう一段深く考えさせること、思い込みを捨てさせること質問をすることで、考える力が高まります。
上司に限らず、先輩や同僚など互いに質問し合える職場は理想です。
お互いの質問が個々の考える力を高め、さらに良質な質問を投げかけ、考える力が一層高まるプラスのスパイラルが生まれます。
つまり、質問する側も常に考え、質問自体も進化し続けることが大事なのです。