経済学、政治学、法学など社会科学の総合的研究を標榜する東京大学社会科学研究所。
社会調査データの保存・公開の他、いくつかのテーマで共同研究を行うこの機関で、「希望学」というテーマが、今見直されています。
「希望学」とは、もともとは東大の玄田有史教授が提唱したもので、日本に文字通り希望がくがなくなってきた、不安が蔓延しているのはなぜか、どうしたら希望を持た国になるのかという想い研究が起こりです。
玄田教授は、大丈夫という言葉の使われ方が大きく影響していると言います。
「大丈夫か?」と疑問符での使われ方が、若い人たちの希望をどんどん失わせているとと。
これを「大丈夫だよ」に変えようと言っています。
“大丈夫”というのは本当は丈夫に“大”が付いているのですから、安心感のある言葉だったわけです。
しかしこれが、今では不安を喚起する言葉として使われることのほうが多くなってきているのです。
本来の意味の「大丈夫だ!」を日本に取り戻そうという研究が社会科学研究所でも共同テーマとして扱われてきました。
一時期、下火になっていた研究テーマなのですが、その重要性が見直され、もう一度全所的プロジェクトにしようという動きが出ています。
「大丈夫か?」という投げかけは、相手のことを案じる想いからの発信です。
しかし、それを重なってしまうと、過度な心配となり、逆に相手を追い込んでしまいます。
人は追い込まれてると、言い訳をして、嘘をつくようになります。
さらに追い込まれると、思考が止まり、行動も止まってしまいます。
結果として、余計に心配な状況となり「大丈夫か?」というメッセージを発信するようになります。
一方「大丈夫だよ」という言葉は、安心感と余裕を生みます。
今の方向で合っている、支えてくれている人がいる、自分を信頼してくれているというメッセージとして相手は受け取ります。
心配な方向に進んでいたとしても、まずは安心感と余裕を与えるメッセージを送ることが大切です。
人は心に余裕があって初めて変化への姿勢を持つことができるためです。
「希望学」と聞くと、アカデミックでとっつきにくいイメージを持ちますが、その本質はマネジメントの基本と言えるるかもしれません。