ワイガヤってご存知ですか?
ホンダの文化を語る上では欠かせないもので、年齢、所属にとらわれずにワイワイガヤガヤと本質を語り合う場です。
注目すべきは、そのテーマで、“未来価値を探る”ということ。
今の技術や市場から考えるのでは、革新的なものは生み出されない、せいぜい改善と言えるものでしょう。
自分たちの事業の枠組みにこだわらず、本来、人は何を欲するのか。
これまでは何が求められ、何が廃れてきたのか。
今後はどのように変化し、何が、どのような形で求められていくのか。
本質的な価値を仲間とともに三日三晩、考え抜く。
このような議論を繰り返すことで、組織に本質思考が浸透し、“ものづくり”ではなく、“価値づくり”を行える組織になっていきます。
それを研修という形に応用した“ワイガヤ研修”では、ただ議論をするだけではなく、中間報告を入れながら見落としがちな点をフィードバックしていきます。
見落としがちであるけれど、価値づくりでは重要な観点。
それは、技術者、研究者の方だけでなく、ビジネスマン全員が意識すべきことであり、経営者や現場のマネージャーに常に問いかけて欲しい観点です。
≪“価値”を掘り下げる観点≫
●「小さくまとまり過ぎていないか?」
ロジカルである反面、小ぶりにまとまってはいないでしょうか?
「今の製品、ソリューション、研究開発」からコンセプトを発想していないでしょうか?
なんとなく良いものだけど、なんとなく既にありそうなもの。
それでは、イノベーションではなくてオペレーションです。
もっと遊び心を持ちましょう。課題解決や顕在化したニーズからはi-padは生まれていません。
「こんなものがあったら面白いな」という突拍子もない発想が、イノベーティブな新事業を生みます。
●「表面的な価値にとどまっていないか?」
「快適」や「安心」「エコ」といった「聞こえのいい言葉」は要注意!
人によって意味するものも、イメージするものも違います。なんとなくで、分かった気にならないこと。それでは、相手もなんとなくしか理解できません。
鋭角で人に伝わるように、その言葉が何を意味するのかを掘り下げることで、「本質!」が見えてきます。
「快適ってなんだ?」「なぜ、快適が求められるのか?」「なぜ?なぜ?なぜ?」を考え抜くことで、本当に求められる価値にまで落とし込むことができます。
●「それは、” いま ” 求められていることではないか?」
「いま」の本質を考え抜いて「次に」求められることを掘りおこすことが重要です。
「いま」からは、1~3年後の事業しか見えてこないですし、そのくらいの期間では改善レベルの研究開発しかできないでしょう。
10年後、20年後には何が求められているか。震災と原発事故対応が収束した先に見えてくるものはどんな社会なのだろうか。世界なのだろうか。
皆さんの役割は未来に続く「イノベーション」を生み出すことです。
●「その言葉で本当に伝わるのか?」
言葉を洗練させることがミッションではありませんが、世の中が求める価値を“一言で”かつ“興味を惹かせる言葉”で表現することが重要です。
なぜなら、新しいことは一人ではできないためです。
新しいものを開発したり、事業化したりするためには、社内だけでなく、社外の関係者も巻き込んでいく必要があるでしょう。
人は興味がわかないものには巻き込まれません。
特に、これまでなかったものを生み出す場合には不安も先行します。
それを打ち払うような、グッとくるような表現にまで落とし込むことが、一歩目です。
その言葉、社内用語になっていませんか?
普段の生活で、同じ人とばかり会話をしていませんか?
●「気づいたら本質とずれていないか?」
議論に白熱する中で、本質から既にずれてしまっていないでしょうか?
新しいことを生み出すことは求められていますが、それが目的ではありません。いくら新しいものでも、世の中に受け入れられるものでなくては意味がありません。
皆さんは“ものづくり”ではなく、“価値づくり”が求められているのです。
また、言葉にこだわることは重要ですが、言葉を洗練させることが目的ではありません。
「価値を表すのに、しっくりくる言葉がこない」そう思ったときは、実は、価値と思っていること自体がずれている可能性があります。
●「自社でやる理由が、今の事業での観点に偏っていないか?」
「いまの製品、ソリューション、研究開発が使える」では、現状の延長上です。
それではもう遅い!自社でやる理由は、強みの「本質」、すなわち開発に対する「哲学」や組織に流れる「風土」、開発の「DNA」といった組織のCapability です。
製品が強みなのではなく、それを生み出す技術屋それを生み出した組織が強みなのです。現状の事業にとらわれる必要はありません。
繰り返しになりますが、皆さんの役割は未来に続く「イノベーション」を生み出すことです。