ある人事の方とで、ジョブローテーションや人事異動の話をしました。
組織内で人の流動性を高めることは、本人の成長・周囲の成長、組織の活性化、ナレッジの汎用化など様々なメリットをもたらしてくれます。
しかし、実際にジョブローテーションや人事異動をしようとすると、組織上の障害もさることながら、それ以上に現場の管理職の方の強い反対が阻害要因となってくることが少なくないようです。
その理由は様々あると想像できますが、よく聞く声の1つとして、
「優秀な人材を出したくない」
「できない人が来ても困る」
というものがあります。
なるほど、よくわかります。
これは企業においてのみならず、スポーツでチーム編成を行う際にも見られる傾向でしょう。
しかし、優秀と言われる人を集めた場合、似たような人ばかりが集まってしまうことがあります。
たとえ優秀な人材が集まっても、強みが似通っては組織としての相乗効果が見込めない場合があります。
法輪寺三重塔、薬師寺金堂の再建なども手がけ、「最後の宮大工」と言われた故西岡常一氏はこんな言葉を残しています。
「五重塔の柱に同じ太さのものは1本もない。
だから寸法は揃わない1本1本の木のくせを生かして使っている。
せせこましい人為を越えていたから1300年の歴史にたえられた。
節のない木目の揃った木だけを使って建てた室町時代の建物は600年しかもたなかった・・」
西岡棟梁は、「木」にこだわり、「伝統的な大工の技術」を後世に残し、伝えることにこだわり続けた人でした。
そんな、西岡棟梁が残したこの言葉は、組織の強さにもつながるものではないかと私は考えます。
1本1本の木の太さが違うというのは、1人ひとりの強みや価値観の異なる人が集まった組織です。
強み・価値観の異質な組織をまとめあげるためには、リーダーの信念や技量・度量が求められます。
しかし、そのような異質なものの結合だからこそ、1300年もの間の風雪に耐えられる強さを生み出せたように、人の集まりに老いても強い組織を作ることができるのではないでしょうか。
人にはそれぞれ強み・弱みがあります。
組織を構成する意味は、各人が持つ強みを活かし、互いに助け合いながら一人でできないことをみんなで達成していくところにあるはずです。
強みを見るときに、マネージャーの方は自分と同じ強みを持った人を「優秀だ」「出来がいい」と考えてしまいがちです。
もちろんそれは間違った考えではないでしょう。
しかし、組織編制を行う際には、あえて自分とは違う価値感を持った方を組織に入れてみるということも、今後の組織活性・成長につながるのではないでしょうか。
「真っすぐ伸びる木もあれば、ねじれる木もある。
材質も堅い、粘りがあると様々です。
木も人間と同じ生き物なんですよ。
だから個々の木の声に耳を傾け、それぞれの生命を殺さずに、塔やお堂に移し替えるということが何よりも大切なんです。
西岡 常一