日記というか、ひとり言。

散歩をしていて、スポーツ見ていて、映画を見ていて、漫画を読んでいて思ったこと。

『ちはやふる』の面白さを目いっぱい語ってみた

明日からロードショーされる映画ちはやふる-下の句-』。 

 

ちはやふる-上の句-』も見ていない自分ですが、漫画の大ファンです。

映画の評判はわかりませんが、漫画の方は、もう傑作と言える作品です。

火の鳥 鳳凰編・太陽編』『風の谷のナウシカ』『サバイバル』『SLAM DUNK』なんかと並んで、22世紀に残したい漫画に入るくらいのレベルです

 

百人一首の魅力を広めること貢献しているという文化的なポイントも高いですよね。

 

f:id:naotohayashi:20160427162509j:plain

 

まずは作品の概略を。

テーマは競技かるた。

百人一首の上の句を聞いて、相手より早く下の句の札を取るというスポーツです。

そんな競技かるたを愛してやまない女子高生・綾瀬千早を中心に、彼女と周囲の友情、恋愛、成長を描いている漫画です。

王道青春漫画と言えるものなのですが、登場人物一人ひとりが成長していく様子が本当にうまく表現されています。

 

そして、上の句の一文字目を聞いただけで、体ごと飛び出して札をとるスピード感。

 

f:id:naotohayashi:20160427162426j:plain

 

 登場人物と同じように、聞いたこともなかった「競技かるた」の面白さに、グイグイと引き込まれていきます。

 

「え?少女マンガはちょっと…」と思った人にこそ、読んでほしい。

だって、これ少年ジャンプでこそ連載すべき漫画だからです。

あの少年ジャンプの三大原則である「努力」「友情」「勝利」っていうのが、120%表現されている。

その3つのバランスという点からすると、「『SLAM DUNK』よりも上」と言っても過言ではないでしょう。

 

少女マンガの土俵である「恋愛」なんか、最近になってやっと見られるようになってきたという程度。

これまでは、「恋愛」をギャグとして扱われるくらいでしたから。

 

 

そんな漫画『ちはやふる』の面白さを独断と偏見で目いっぱい語ってみようと思います。

 

 

≪サブキャラに魅力がある≫ 

f:id:naotohayashi:20160427162613j:plain

 

これは面白い漫画や小説なんかの鉄則だと思うのですが、出てくるキャラクターそれぞれに魅力があるんですよね。

SLAM DUNKでりょーちん派、みっちー派みたいなのがあったじゃないですか。

ほとんど出てこない大栄学園の土屋淳も、ほんの数コマだけでファンができてしまったりとか。

 

ああいう滲み出る魅力って言うのが、一人ひとりから伝わってくるんですよね。

巻末のおまけコーナーなんかを本当に上手に使っている。

 

で、むかつく相手はむかつき所をしっかり表現していますが、その人の背景なんかを知ると嫌いになれないんですよね。

天使なんかじゃないばりに、最後はみんな良い人に感じるようになるんですけどね。

 

主人公に頼りきっていないから、飽きが来ない。

そして、団体戦においても「みんな負けるな!」と手に汗握る思いで見入ってしまう。

 

 

≪名言の宝庫≫

高校生活が舞台のこの漫画。

悩む生徒に投げかける教師の言葉。

そして、そんな生徒自身が成長することによって口にする言葉。

もうね、その言葉1つだけで、コミック一冊463円(税込)の価値があるなと思えちゃいます。

 

f:id:naotohayashi:20160427163035j:plain

 

寄生獣ブラックジャックに匹敵するくらいの名言博物館ですよ。

 

例えば、ちょっと抜粋すると、

 

“青春ぜんぶ懸けたって強くなれない”?

懸けてから言いなさい

 

一生懸命は楽しいぞ

 

本当に高いプライドは 人を地道にさせる

目線を上げたまま

 

おれにもできるかな

負けながら泣きながら 前に進むことが

 

先生 おれはA級になるより

……逃げないやつになりたい……

 

懸けてきたからこそ 怖いんだ

なにも残らなかったら? 悔しさしか残らなかったら―――

 

泣くな おれはまだ 泣いていいほど懸けてない

“悔しい”だけでいい

 

「たいていのチャンスのドアにはノブが無い」と…

自分からは開けられない だれかが開けてくれたときに

迷わず飛びこんでいけるかどうか そこで力を出せるかどうか

 

きついな 一生懸命って……

言い訳が きかねえよ

 

”恥ずかしい”と泣ける心は、美しいと思います

  

ギャー!!!

もう心に刺さるものばかりです!

 

 

≪簡単に勝てない≫

スポーツ漫画って、なかなか主人公やそのチームが負けないんですよね。

バトル漫画もそうですが。

 

ドカベンなんかは3年間中で5回甲子園に出場して(つまり予選敗退なし)、負けたのは1回だけですからね。

里中は甲子園20勝投手ですよ。

 

ただ、学生スポーツで学びが多いのは、やっぱり負けたときなんですよね。

山王工業の堂本監督も言っていたじゃないですか。

「負けたことがあるというのが、いつか大きな財産になる」と。

  

f:id:naotohayashi:20160427163423j:plain

 

 

ホントその通りなんです。

 

でも、実際には何度も負けさせられないんです。

練習試合では負けても、本番では。

 

だって仕方ないですよね、負けたらそこで終わりですから。

最後は、主役が勝つっていうのが醍醐味なんです。

負けさせて、作品自体を終えてしまった名作があったくらいですもんね、堂本監督!

 

その点で言うと『ちはやふる』は主人公の綾瀬千早が負けるシーンが結構多いんです。

しかも、大事なときに。

 

これ、競技カルタの勝敗特性、大会特性をうまく活用できていると思います。

・予選2位までが全国大会に行ける。

・1つの高校選手権で個人戦と団体戦の両方がある。

・1年間に高校生の大会とオープン大会の両方がある。

 

体操漫画ガンバ!Fly highや、テニス漫画ベイビーステップなんかも同じような特性をうまく使って、負けや失敗を通じて主人公たちの成長を描いていました。

この2つも名作ですね。

 

主人公やその仲間たちが負ける過程で感じること、学ぶことがあり、そしてそれを通じて大人になっていく姿が胸に刺さりますね。

 

そして、何より「結局勝つんでしょ」っていう予定調和がないから、一つ一つの試合が面白く感じられる

 

f:id:naotohayashi:20160427163508j:plain

 

 

≪マイナーテーマだからこそ≫

マイナースポーツだからこそ、スタートが一緒。

初めて知るからこそ、段々はまっていく。

 

球漫画だともう入り口で野球を知っている人だからこそ楽しめるっていうのもあるじゃないですか?

「四番が一番打つ人」「キャッチャーはグラウンド上の監督」「140kmのボールを投げる高校生はすごい」。

そういった誰もが知っていそうな前提があるからこそ楽しめることが。

あ、『アストロ球団』みたいに野球がわかっているほど理解できないって漫画もありますが。

 

読んでいる僕たちもそうなのですが、登場人物も初めは「は?www カルタ?www」という人も少なくない。

それが次第にかるたの魅力に惹かれていく。

 

この感覚は、読者も同じなんです。

そういう意味では、登場人物と同じ目線を共有できる作品とも言えます。

 

「は?www 少女漫画?www カルタ?www」 と思った人にこそ読んでほしいと思います。 

 

あ、「マイナースポーツ」と運動部という枠で語っていましたが、このことについても作中でこんな表現がありましたね。

体育祭のあと みんなにかるた部は運動部みたいって言われましたけど、私にとっては文化部です

体一つで男女一緒に戦えるのは文化だからです

なるほど、失礼しました。

 

f:id:naotohayashi:20160427162953j:plain

 

 

≪人間くさい≫

青春スポーツ漫画って、みんなそのスポーツが大好きなんですよね。

そのスポーツに対する何らかの才能があって、その道で努力することは当たり前で。

一生懸命練習することの肉体的なつらさは表現されたとしても、精神的なつらさが表現されていることは意外と少ないものです。

 

でも、この『ちはやふる』はそうじゃない。

主人公こそ、かるた大好き一直線なキャラクターですが、他の人は色々な思いでかるたを始めている。

 

競技かるたではなく、百人一首が好きで始めた人。

努力が嫌で一度辞めたけど、無理やり入部させられた人。

好きな人が好きだからという理由で続けている人。

好きな人がいるから入部した人。

かるたしかないから続けている人。

ご飯が食べられるからやっている人。

日本に溶け込みたいから始めた人。

友達をクイーンにするために、本気でやり始めた人。

褒められたいからやっている人。

 

f:id:naotohayashi:20160427163742j:plain

 

本当に十人十色で、むしろ「かるたが心底好き」っていう人の方が少ないくらいです。

そうなると、他のスポーツ漫画と違って、努力すること、一生懸命練習することっていうのが精神的につらいんです。

「一生懸命やって何も残らなかったらどうしよう」

「カルタを続けることに意味があるんだろうか?」

「全力でやるのってカッコ悪くないかな?」

というような葛藤を抱えながらも、それでもみんなが畳の上に向っている。

 

そういう葛藤がものすごく良くわかる。

単純に一生懸命になれない理由っていうのに、ものすごく共感できる。

 

だから、登場人物一人ひとりの言葉に重みがあって、あれだけの名言が生まれている。

うん、そうなんです。

カッコいい言葉だから名言なんじゃなくて、気持ちに共感できるから名言かのように心に刺さってくるんです。

 

 

と、こんなところが漫画『ちはやふる』の魅力です。

 

映画はそういったところがどこまで表現されているのか。

もしくは漫画とは違った作品に仕上がっているからこそ面白いのか。

それとも、期待すべきではないのか。

 

そこのところはちょっとわからないので、もしこのブログを読んで興味が湧いた人がいたら、映画館に行く前に、本屋か漫画喫茶に走ってください。