「“1人の100歩”よりも“100人の1歩”の方が大事。」
確かにその通りだろう。 2歩動けば200歩になるし、1人が歩みを止めても、99歩進める。
しかし、この「1人が歩みを止めても」という意識が怖い。
「弊社の社員は当事者意識がない」という課題をお伺いすることがあるが、まさにこの部分。
「自分がやらなくても」という意識がその背景にある。
このことについて、元サッカー日本代表監督 岡田武史氏が早稲田大学での講演会で、こんな例え話をしていた。
村の祭り酒という話を、選手によくします。
収穫を祈念して、夏祭りをする村があった。
祭りでは、お酒が入った大きな樽を、みんなでパーンと割って始める風習があった。
ところがある年、貧乏でお酒が買えなくて「どうしよう、これじゃ祭り開けねえな」とみんなで悩んでいた。
するとある人が、「みんなが家からちょっとずつお酒を持ってきて、樽に入れたらどうだ?」と提案した。
「それはいいアイデアだ」ということで、みんなが持ち寄って樽がいっぱいになった。
「これで夏祭りを迎えられる。良かった」ということで当日にパーンとみんなで樽を割って「乾杯」と言って飲んだら、 水だったという話です。
みんな、「俺1人ぐらい水を入れてもわからないだろう」と思っていたんです。
ワールドカップ前の2009年、親善試合でのオランダ戦。
負けているけど「自分の役割はこなしている、だから負けてるのはしょうがない」といった選手たち。 結果は惨敗。
次のガーナ戦は、その気持ちを入れ替えさせてた。
「チームのために、自分がやらなくてはいけない」 と意識付けさせた。 それが勝利につながったという。
組織が動き出している時に、「俺1人ぐらい」という意識の人が出てしまうことは危険だ。
実際には「俺1人」ではないため、組織の動きは鈍化する。
しかし、それ以上に危機的なのは、組織が動き始める時に「俺1人ぐらい」と思う人ばかりになってしまうこと。
言い方を変えると「誰かやるだろう」という気持ち。
やることは決まった!
さて、誰がやる?
「・・・・・。」
目の前に広がるのは、目を合わせようとしない社員たち。。。
よくある会議の風景ではないだろうか。
一人一人の思想は組織の文化が作り上げる。
自分が「俺1人ぐらい」「誰かやるだろう」という気持ちに一瞬でもなったとしたら、そんな思いは、組織全体に蔓延していると思った方が良いだろう。
「“1人の100歩”よりも“100人の1歩”の方が大事。」
確かにそのとおりだ。
しかし、1人が100歩進もうとする姿勢に引っ張られて、周りの100人が一歩目を踏み出すことができる。
そして、人材育成、組織変革にも同じことが言える。
「自分がやらなければ」そんな思いを持った人物が一人でもいるかどうか。
(2012年12月3日秩父夜祭)