人事制度構築の依頼をいただくときに、「マネジメントが機能していないから」という課題を聞くことが多くあります。
ここで誤解しないでほしいことは、人事制度はマネジメント支援ツールにはなるが、マネジメントツールではないということです。
目標管理制度を導入しても、目標に向けての進捗を上司が把握し、それに向けてのPDCAサイクルのアドバイス(アクションプランの修正)を行うなど、期中の支援こそが、目標達成、本人の成長の鍵となってきます。
評価目線が統一されていないという課題があったとして、評価基準を一新したとする。しかし、期中に部下の行動を把握しようとしなければ、適正な評価はできません。
そもそも、その評価が適正と言えるものであったとしても、普段の上司・部下との関係がよくないようであれば、良い評価も悪い評価も素直に聞き入れられないでしょう。
逆に信頼している上司からフィードバックされる内容であれば、耳が痛い評価であっても、受け入れることができます。
「部下を育てたい」「チームの目標達成を引っ張りたい」という管理職の意志が重要なのは言うまでもありません。
こういう話を人事の方とすると、
「そうなんですよ。管理職の意識が足りないんですよ。」
という声が返ってくる。
そのことについては事実なのでしょうが、同時に自分自身についても、振り返ってみていただきたい。
昨今、導入する企業が増えている「自己申告制度」。
社員が「やりたい」と思っている仕事につける機会を与える、前向きな仕組みにもなります。
その他にも職場環境の改善などにつながることもあるでしょう。
しかし、こういった制度は大きな組織において、人事が社員一人ひとりの人事情報を効率的に収集し、配置を固める手段の1つに過ぎないものです。
現場のマネジメントにおいて、「部下を育てたい」「チームの目標達成を引っ張りたい」という管理職の意志が不可欠であるように、会社全体のマネジメントにおいても、人事の意志が重要な要素になります。
「社員に前向きに働いてほしい」
「社員全員が成長し、よりやりがいのある仕事に取り組んでほしい」
「家族や人生設計で支えられることはないか」
など。
人事だけでは、組織は動かすことは簡単ではないかもしれませんが、人事の強い意志がなければ、経営陣を動かすことはできません。
人と組織を動かすのはトップに立つ人物の意志、想いや行動姿勢であり、仕組みというのはそれを補完するものに過ぎないと考えるべきです。