日記というか、ひとり言。

散歩をしていて、スポーツ見ていて、映画を見ていて、漫画を読んでいて思ったこと。

育成につながる人事制度

「社員の育成につながる人事制度」というテーマのご要望をいただくことが非常に多くあります。

 

実際に人事制度というものは単に処遇を決めるのみのツールではなく、社員の自社におけるキャリアアップ像を示し、能力開発を支援するためのものでもあるので、このようなご要望は“本質”と言えるでしょう。

 

しかし、等級定義、評価制度等に育成につながる要素を盛り込むことは、仕組みとしては可能なのですが、育成につながるかどうかは“運用”がその鍵を握ると言えるでしょう。

 

 

【小売業G社の事例】

 

インテリアや小物、アパレルなどを扱う小売チェーンのG社の評価制度は、

 

・目標管理による月ごとの目標の達成度を評価

・目標達成に至る行動を定性項目で評価

 

という2軸での評価を行っているのですが、人事制度がそのまま現場でのOJTの指針となっている非常に良い事例です。

 

1つの店舗には、店長のほかに社員が3~5名。その他、数十名のアルバイトスタッフがいます。

店長の上席にはエリアマネージャーがいるのですが、社員の評価は店長が行っています。

 

評価時期は半年後となのですが、店舗では毎月業務目標を立てています。

目標を立てて、実行し、振り返る。その振り返りをもとに次月の目標を立て直す。

そのサイクルの繰り返しで、一見すると“普通”と思われるのですが、運用が素晴らしいと感じました。

 

私が感じたポイントは、以下の3つです。

 

-----------------------------------------------------

①業務サイクルに合致した行動評価項目

②目標管理と行動評価の連動

③評価制度を活用した戦略会議

-----------------------------------------------------

 

①業務サイクルに合致した行動評価項目

 

行動を評価する項目は、下記のようなものがあります。

 

・情報収集力

・仮説力

・実行力

・協働力

・検証力

 

こちらも一見、“普通”です。

しかし、実際には「情報収集力→気づき力」、「実行力→すぐやる力」

など非常に馴染みやすい表現になっています。

また、各項目にはロジックツリーのように、さらに詳細な項目が紐づいていて、現場でイメージしやすいものになっています。

 

そして、この項目、ただ縦に並べてしまうとわかりにくいのですが、

 

変化・問題に気づく → 解決施策を考える → すぐにやる

→ 周囲と協力する → 振り返る

 

と言った形で、PDCAサイクルの進化版のようになっているのです。

(実際はもっと多くの項目がありますし、マネジメント層には別のサイクルが付随してきます)

 

新入社員研修などで、「仕事の進め方はPDCAだ」ということはよく耳にします。

しかし、実際、仕事を上手く進めているかを判断する行動評価項目は、PDCAどころか、ブツ切りになってしまっていることが多いのではないでしょうか。

 

 

②目標管理と行動評価の連動

 

月ごとの業務目標は、各個人目標は店舗の粗利目標を達成するためにそのプロセスが数値化されているものもあれば、定性的なものもあります。

 

目標管理の場合、できたか、できなかったかという結果のみがフォーカスされて終わってしまう場合が多いですが、G社はその目標達成に向けたプロセスを行動評価項目で振り返ります。

 

「今回達成できなかったのは、『すぐにやる』ことができなかったからだよね」

「今月は目標通りの結果は出せましたが、『周囲と協力』すればもっと大きな成果をあげることができたかもしれません。」

 

と言った会話が、毎月店長とメンバーの間で行われます。

 

PDCAサイクルの進化版となった評価項目を最大限活用していることが伺えます。

 

目標管理はボーナスに、プロセスである行動は昇給に。

と、反映先が違うと、あたかも違うものを評価のように感じてしまいますが、本来はこのように連動してフィードバックしていくこと

が重要なのです。

 

 

③評価制度を活用した戦略会議

 

フィードバックの重要性は異論の無いところだとは思いますが、実際はないがしろにされてしまうケースが多いことを、よく耳にします。

 

この企業のある店長の話を聞くと、

「自分を含めて社員4人は月末の定休日の前日の夜、ファミレスで来月の作戦会議を行っています」

とのことでした。

実はこの会議、月ごとの個人の目標を振り返る機会ともなっているのです。

 

「今月の目標は達成できたね。来月の梅雨の時期を乗り越えるにはどうしたらいいだろうか。

そのためにはA君は何をする?B君は何をする?」

 

と言った形で、時には朝まで語り合いながら、主体的な目標を引き出していくそうです。

先月のできなかった目標に対しては、行動評価項目を活用しながら振り返っていきます。

 

スタッフ全員で行うことで、お互いの重点課題も把握できますし、サポートできることも見つかります。

 

それぞれのメンバーが店舗運営に自分自身がどれだけ重要な役割を担っているのかを認識することにも伝わります。

 

また、その場ではお互いの期待を伝える場、良い行動を共有し合うことも行い、店長としては期末の評価の事実集めの場ともなっているようです。

 

会社としての必要な評価は半期ごとに行うのですが、評価の時期以外にも、このように評価制度を活用して、店舗運営をPDCAサイクルで回しているのです。

 

-----------------------------------------------------

①業務サイクルに合致した行動評価項目

②目標管理と行動評価の連動

③評価制度を活用した戦略会議

-----------------------------------------------------

 

①以外は制度を変更することなく、運用によって誰でもできるものです。

しかし、言い換えると、運用する管理職の方にたよってしまうということも事実でしょう。

 

制度を構築する際には、仕組みをどれだけ精緻にするか以上に、どう運用してほしいかをイメージすることが大切です。

 

そして、リリースの際にはその旨を評価者となる方にしっかり伝えていかなければなりません。

 

私達が、評価者研修を実施する際には、評価する上で必要な知識・スキルと同じくらい評価者の“心構え”を重視しています。

 

「社員の育成につながる人事制度」は決して特別なものではなく、“どのように運用するか”それが最も重要なことなのです。