「君は、なぜこの事業をやりたいと思ったの?」
研究職を対象とした新規事業創出研修。
この言葉は、その最終成果報告会で、自らが企画した新事業プランをプレゼンテーションする受講生への専務からの投げかけでした。
「君は、なぜこの事業をやりたいと思ったの?」
もちろん、その答えには市場の拡大可能性や自社の強みが活かせるフィールドあるといったことが挙げられます。
ただ、その前提として、なぜその分野で価値を生み出したいと思ったのか。
専務はそこを問うていました。
宇宙事業であれば、「宇宙が子供のころから好きだから」でもいい。
介護事業であれば、「両親が日々苦労している姿を見て」でもいい。
環境事業であれば、「子供が大きくなった時を想像して」でもいい。
そういった、企画した本人のバックボーンにも関わってくるような、動機やきっかけ。
専務はそれを“オリジナルモチベーション”と表現していました。
新しい事業を提案する際に、市場の魅力度や自社の適社度が、経営陣を納得させるための材料になることは言うまでもありません。
それと同時に、いやそれ以上に、事業推進者となる人物の熱意が、その成否を分ける重要なカギになってきます。
新しい事業ともなれば、簡単には結果の出ないものばかりでしょう。
長期的な取り組みの中で、失敗もあるかもしれません。
それでも、「この事業には価値がある」ということを信じて、継続してこそ真の成果が見えてくる。
また、新しいものというものはえ得てして、反対者も多いもの。
イノベーションともいえるようなものであるならば、尚更でしょう。
だからこそ、そこには市場の可能性以上に旗振り役となる人物の「どうしても、やりたいんだ。」という意志の強さが不可欠です。
誰に反対されても研究を進めることを提案し続けられの内容なのか。
一生付き合っていけるような研究なのか。
イノベーションはロジックでは生み出せません。
どれだけマーケティングに尽しても、そこには“確実”と言えるものなど、何もないでしょう。
それでも、前に進もうと熱意。
決してあきらめない意志の強さ。
旗振り役となる人物のそんな熱意が周囲を動かし、イノベーションが生まれます。
「“1人の100歩”よりも“100人の1歩”の方が大事だよ。大きな力を生み出せるからね。」
「確かにそうかもしれないね。でも、1人が100歩進もうとする姿勢に引っ張られて、
周りの100人が一歩目を踏み出すんだよ。」