「船を造りたいのなら、男達に木を集めるように呼びかけたり、仕事を割り振って命令したりする必要はない。
代わりに、彼らに広大で無限な海の存在を説けばいい。」
『星の王子様』で有名なサン=テグジュペリの言葉です。
この言葉は企業経営においても重要なことを示唆してくれています。
経営方針を発表する時期です。
3月までに3社様ほど、その方針策定のお手伝いをさせていただきましたが、大事なのは、社員が聞いて「やるぞ!」と思えるものかどうか。
利益を生むことが企業存続の糧。
そうなると、発表される方針は、どうしても利益目標やそれを補う効率化といったことが主となりがちです。
そしてそこに続くのは、各事業の重点戦略。
もちろ重要な要素ではありますが、目標とやることだけを聞かされても、、、ワクワクしないんですね。
方針を全社員に伝える目的は、目指す方向を示すこと。
それによって、社員個々が自分の仕事の存在目的や意義を自覚し、仕事に向かうエネルギーを高めてもらうことです。
そのためには、利益目標だけでなく、長期的な展望、やっている事業の社会的な意義、想い、そして社員自身にとっての将来像を語ることが必要です。
「こういうことをやりたい。実現できたらきっと素晴らしい事が起きる。一緒に頑張っていかないか?」と社員を鼓舞することが、方針を伝える目的なのです。
もちろん、長期的な展望を聞いて本気で「やりたい」と思える社員もいれば、「荒唐無稽な夢だ」と思ってしまう社員もいるでしょう。
そして、長期的な展望よりも、目の前の仕事にしか関心がない人もいるでしょう。
そして、具体的な作業内容だけを言ってくれた方が、やりやすいという人もいるでしょう。
しかし、会社にとってもそのお客様にとっても必要なのは、言われたことをやるだけでなく、自分で考え行動できる人です。
繰り返しになりますが、そのために経営者、管理職に求められることは作業内容を伝えることではなく、鼓舞するマネジメントなのです。
方針発表。
発表する側は、重要なことを伝えているつもりでも、実は士気を下げてしまっていることもあります。
立派な言葉で伝えられているとしても、毎年同じ内容でお題目のように感じられてしまうことがあります。
方針発表の前に、今一度、社員の立場になって、ワクワクするか? 「やるぞ!」と思えるかと考えてみることが大切です。