余命2ヵ月のアンが、秘密のリストを1つずつ実行していく映画『死ぬまでにしたい10のこと』。
かれこれ10年ほど前の映画になりますが、この秋のドラマ『ディア・シスター』内で取り上げられ、映画の記憶が蘇った人も少なくないでしょう。
「死ぬまでにしたい10のことを挙げてみよう!」
忘年会などの場でこんな話題を振ってみてください。
意外と……出ないんです。
特に若手社員から。
欲しいもの、行きたい場所、住みたい家などの欲求・願望が、「特にない」という状態なのです。
驚くほどに。
これが「良い」「悪い」というのではありません。
ただ、管理職の方はこの「欲求・願望が特にない」という感覚を頭に入れておかないと、部下の心に響かない鼓舞を続けてしまうかもしれません。
「何かを成し遂げたい」「何かを手に入れたい」「何かになりたい」とった実現欲求は、人の大きなエネルギーになります。
それがあるからこそ、やるべきことに主体的に取り組むことができ、辛いこと仕事も我慢できます。
しかし、若手社員、もっと言ってしまえば、40代の方にもこのような実現欲求を強く持ったことがない方が少なくないようです。
大前研一氏の言葉を借りれば、“低欲望社会”で育ってきた世代です。
言い換えると、「多くを望まない」世代なんですね。
もちろん、実現欲求が高い若手社員もいますが、過去と比べると傾向値として感じられます。
頑張ることによって、昇進・昇給があったとしても、それを望まない。
それによって、やりがいのある仕事ができとしても、それも望まない。
結果として大きな家に住めるとしても、それも望まない。
もちろん給与が上がることは嬉しいけれど、今以上に大変になるのなら今のままでいい。
そういう感情を無視して、「実績上げないと同期から遅れを取るぞ」「将来困るぞ」「なんで頑張らないんだ」と鼓舞したとしても、なかなか響きえません。
「それは会社(上司)の都合でしょ」と。
「なんで頑張らないんだ」という言葉が表すとおり、上司からすると「頑張ったらいいことあるんだから、頑張るのは当たり前だろ」と行き違いが起きている状態です。
だからと言って、私が言いたいのは「これからのマネジメントは、実現欲求がないことを前提に考えましょう」ということではありません。
先述の通り、実現欲求は人の大きなエネルギーになります。
これを活用しない手はありません。
そして“低欲望社会”で育ってきた世代は実現欲求を高く持つ機会が少なかっただけであり、「持てない」のではなく「苦手」なだけです。
上司は管理者ではなく、支援者です。
苦手なことを前提として、将来のなりたい姿を一緒に考える機会を持つことが大切です。