ある記事で横浜マリノスの代表である嘉悦朗氏が今シーズンのマリノスの好調な理由に「チームスタイルの確立」を挙げています。
嘉悦氏が正式に社長に就任して以来、マリノスは2010年に8位、2011年に5位、2012年に4位と着実に順位を上げており、今季も首位争いを行う位置につけています。
その記事からの抜粋になるのですが、嘉悦氏はチームスタイルについて、こう語っています。
「就任からいろいろな経験をさせてもらった結果、やっと気づいたんです。
チームスタイルがあいまいだと、選手の替えも効かない。
補強する選手もそこに当てはめることができないと。
たとえ順位が悪くても、まず手をつけるべきはスタイルだと思いました。
図で言えば、左下の領域(④)からスタートして、我慢しながら少しずつ右(②)に移動し、そこから急上昇して右上の領域(①)に到達するというルートです。」
なるほど、面白いマトリクスです。
強いチームにはスタイルがあります。
いや、勝てるチームにはスタイルがあるといった方が正しいのかもしれません。
スタイルとは、戦略だったり、得点パターンだったり、チームとしての信条だったりします。
このスタイルが明確化されることで、選手個々は自分の役割を認識しそこに集中することができるし、また試合中に信じるものがあるというのは心の拠り所になります。
もちろん、これらは一朝一夕に出来上がるものではないことは、マリノスの事例を見ても明らかです。
そして、このスタイルが明確になることで、チームが不調の時でもどこをどう修正すればよいかが分かりやすくなり、また補強に必要な人材も一目瞭然になります。
スタイル、いわば目指す姿や理想の状態を持つことはチーム運営上非常に重要なことです。
これはスポーツに限らず、あらゆる組織・プロジェクトについても同様です。
企業内において「問題解決」という言葉がよく聞かれます。
この問題解決を行う際にも重要なことが、理想の状態を明確にすることです。
問題とは、理想と現実のギャップのことを言います。
したがって、理想の状態(=目指すゴール)を明確に認識しないと、問題は見えてきません。
そして、問題が見えていなければ、何を解決すればいいのかも分からないでしょう。
チームで取り組む場合は特に、理想の状態をきちんと共有しておくことが大切です。
「問題=理想と現実のギャップ」ということは言われてみると当たり前のことなのですが、意外と理想の状態を明確にせずに問題解決に取り組んでいることが多いように感じます。
明確な理想像がないまま漠然と「これは問題だ」「あれも問題だ」と言っている場合も少なくありません。
長所と短所が表裏一体であるように、一見問題と感じられること排除していってしまうと「自社らしさ」を失わせてしまうことにもなりかねません。
理想の状態があって初めて問題かどうかわかるのです。
「そもそも、その問題は本当に“問題”なのか?」という視点で見ることで、違ったアプローチができることもあります。
また、人は問題ばかりに目を向けてしまうと、気が滅入ってしまうものです。
理想の状態を描き、その状態を共有することで、組織の一体感と改善に向けた前向きさを持たせることができるのです。
私が参照した記事は「マリノスは、なぜ好調なのに“赤字”なのか」というものです。
タイトルから分かるように、マリノスの事業経営は順風満帆とは言えません。
しかし、嘉悦氏は決算書上の見た目の優良企業ではない別の姿を理想像として描います。
この理想像が、マリノスのフロント陣をどっしりとさせ、好調のもう1つの要因となっているのかもしれません。