全国高校サッカー選手権大会も、いよいよ国立の舞台に突入。
今日の試合で惜しくも敗れてしまったようだが、初出場校の市立西宮のベスト8進出という快進撃が、メディアを賑わせてくれた。
市立西宮高校は、県内では名の知れた進学校。
東京大学や京都大学を目指す人も少なくなく、サッカー部の生徒もサッカーと勉強の「文部両道」を高いレベルで実践している。
「文武両道」を掲げているとはいっても、もともと県大会でベスト8がやっとのレベル。
全国切符を取るまでは、強豪校から練習試合の誘いが来ることはほとんどなく、遠征に行っても控え組を出され、相手にされないこともしばしばだった。
また、校則で部活の遠征は通常3泊4日までしかできず、今回の選手権が初の長期遠征でした。普段の練習も最大で2時間半。
しかし、そのような環境に対しても、MFの難波君はこう答えてくれる。
「勉強とサッカーを両立すると時間が限られるので、集中して やらないとやっていけません。それもあって、自然と集中 することが身についたんだと思います」
限られた時間で、集中してやらなければならない環境だからこそ、効率と質を高め、最良の結果を得るために努力する。
それが、市立西宮のサッカーだ。
大路照彦監督は大会の登録メンバーを決める際に、サッカーの技量が同じであれば、成績の良い方を選ぶと言う。
「勉強を頑張れない奴は、サッカーも頑張れないというのが私の持論です。
現にレギュラーの子は勉強もよくしますし、それがあるからここまで頑張ってこられました」
「時間がないから、できない」という理由は、多くの方が心の中で使ってしまっているものではないだろうか。
しかし、時間に余裕があったとしても、優先事項を後回しにしてしまうことも少なくないはず。
「後でもできるだろう」と。
市立西宮の生徒たちはスーパーマンではない。
他の学校の生徒と同じように、純粋にサッカーが好きだった。
「文武両道なら誰にも負けない」というプライドがあった。
自分にも負けたくないという強い意志があった。
そして、「勉強があるから、練習ができない」という言い訳だけは、決してしなかっただろう。
市立西宮高校サッカー部の3年生9人全員が1月14、15日のセンター試験を受験する。
大会中も深夜1:30まで参考書と睨めっこだったが、明日からは(今日から!?)頭を切り替え、次の道に進むための努力に
専念していくことだろう。
サッカーでの経験が、勉強に100%活きるとは言えないし、受験勉強で学んだことが社会人生活では役に立たないと思うこともあるかもしれない。
が、無駄だったかと聞かれると、彼らは「そんなことはない」と断言するだろう。
大切なのは、困難な状況や課題を乗り越えるために、真剣に取り組んだ経験と、自分に負けなかったという信念なのだから。
「金がないから何も出来ないという人間は、金があっても何も出来ない人間である。」
小林 一三(阪急グループ創始者)