前回に引き続き、「犯人は人事部シリーズ」です。
人事制度を構築するときには2つの視点を意識します。
「社員が意欲を高められるか?」「社員から見てキャリアステップを感じられるか?」などの社員目線。
「経営者のメッセージが伝わるか?」「事業戦略の実行に寄与することを促せるか?」などの社長目線。
「どちらか」ではなく、双方を意識することが大事です。
そう、大事なんです。
けれど、詳細を詰めていく段階になると、段々と寄っていってしまうんですよね。
人事部目線に、運用者目線に、寄ってしまうのです。
改定前の現行制度について「この部分で、こういう仕組みを採用した背景は?」と聞くと、「運用が煩雑にならないように」という答えが返ってきます。
うん、大事なことなんですよ。
必要なんですよ、そういう感覚が。
煩雑になって評価過程で何らかのミスがあってはいけません。
運用が面倒で、人事制度自体が形骸化してしまうようでは、本末転倒です。
でも、、、“楽に運用すること”がゴールになってしまうのはよくない。
当たり前のことですが、意外と忘れてしまう、大きな落とし穴です。
よくわかっている人事の方こそ、経験豊富な人事の方こそ、落ちやすい大きな穴です。
知らず知らずのうちに、運用する自分のことを考えてしまう。
構築中に運用で面倒なことが手に取るようにわかってしまう。
そうすると、次第に社員目線、社長目線がないがしろにされていってしまうんです。
報酬制度なんかは特にそうですね。
社員の目に触れないですし、構造が複雑だと経営者も深入りしようとしないので、運用者の立場で構築されることが多くなってしまいます。
目をいたわってサングラスをかけたら、大事なものが見えなくなってしまうような状態です。
人事制度だけの話ではありません。
あらゆる施策が運用者側の目線になっていることが珍しくありません。
キャリア自己申告制度しかり、日報しかり、営業システムしかり。
支援ツールであるはずが、いつの間にか管理ツールになっていることも。
(もちろん、目的が「管理」というツールもあります。)
「犯人は人事部」なんて、他責な書き方をしてしまいましたが、私たちコンサルタントにとっても大事な戒めなんです。
人事の人の気持ちが手に取るようにわかるから。
人事の立場で物事を考えることも多いから。
運用フォローにかかわることもあるから。
気づいたら、社員目線、社長目線ではなく、運用者目線で最適だと思うものを作ってしまっていることがあります。
いや、それに気づかないなんて事も。
だから、常に問いかけることが大事です。
「誰のための制度なのよ?」と。
自分で、チームで、お互いに。