「大阪都構想」の賛否を問う住民投票が17日に行われ、「反対」が「賛成」を僅かに上回って多数となりました。
投票率は66.83%。
多くの人の関心を集め、提言をしたということだけでも、橋下市長の果たした役割は大きいものだと、私は考えます。
ただ、この大阪都構想。
たとえ可決されたとしても、府庁や市役所に勤める人をはじめとする、大阪行政に関わる人によってうまくいかなかったのではないかとも想像できます。
橋下市長は、住民投票の結果に対して、
「市民に受け入れられなかったということで、間違っていたということになるのだろう。
僕自身に対する批判もあるだろうし、都構想について、しっかり説明できていなかった僕自身の説明不足だと思う」
と述べていました。
「市長の説明不足」。
これには際限がないものですが、「誰に対して?」ということにも注目したいと思います。
橋下市長が言っているのは、基本的には「市民に対して」でしょう。
民意に問うているわけですから市民に向くのは当然のことです。
ただ、それに加え、府庁や市役所に勤める人を始めとした、大阪行政に関わる人たちへの説明が非常に重要ではないでしょうか。
もちろん、その説明は何度もやっていると思います。
府と市の対立は改善できるものではなかったと思います。
何度言っても、変わろうとしない人たちもいて、嫌気がさしたことだと思います。
投票前日の街頭演説の
「腐ってる!
明日、僕は納税者をナメた役所や議会、団体はつぶされることを示したい。
そんな連中を僕につぶさせてください」
という言葉はその気持ちの表れでしょう。
だからこそ、「大阪都構想」という構造改革を提言し、住民に審議を委ねたのだと思います。
しかし、そのようにして大阪都構想を進めたとしても、上手くはいかなかったでしょう。
そこで行政サービスを進めるのは、まぎれもなく府庁や市役所に勤める人を始めとする、大阪行政に関わる人だからです。
彼らの納得感なしに組織構造やサービスを変えたとしても、やらされ感で仕事を進めるだけです。
新しいサービスが自発的に生まれないばかりか、通常業務も遅々としてしまうことは目に見えています。
今回は過去の前例をひっくり返そうという趣旨であったため、過激な発言が多かったのは頷けますが、改革案を通すまでがゴールではないと考えると、やり方・言い方は「適切」とは言い切れません。
このことは企業統合においても、言えることです。
先の例で言う「府庁や市役所に勤める人を始めとする、大阪行政に関わる人」というのは、企業でいう社員です。
スケールメリットを活かすために、両社の強みを活かした新たなサービス創出のために、バックオフィスの統合による販管費の削減のために。
統合を行われる際には、いかにして顧客から選ばれるかということを考えた上での手段でしょうが、同時に社員がどう思うかについても考える必要があります。
特に、業績悪化の煽りを受けての統合であれば、なおさらです。
業績が悪化しているということは、社員の気持ちも前向きであるとは言えないときです。
だからこそ、統合の、顧客にとってのメリットだけでなく、社員にとってのメリットを、経営者がそして管理職が語る必要があります。
メリットと言うと、少しずれているかもしれません。
事業の意義(統合することで社会に対する新しいサービスが提供できるなど)、成長機会、福利厚生の拡充(お互いの制度の良いとこ取りなど)、社会的認知度の上昇などです。
一番大事なことは事業の意義を語ることになるでしょうが、もちろん語るだけでなく、実際にそれが実現できる体制や人事施策を試みなくてはなりません。
統合に成功している企業とそうでない企業との差は、サービス内容や業務プロセスの統合・拡大だけでなく、その担い手である社員の気持ちの面まで考えられているか否かにあります。
一般社員と統合に責任を持つ経営者とでは、見ている視座の高さも視点の長さも異なります。
「だから強硬に推し進める」のではなく「だからこそ解いて納得してもらう必要がある」と考えること大切でしょう。
と、前半は橋下市長の批判のように書いてしまいましたが、決して非難しているわけではありません。
橋下市長だからこそ、今回のような提言を行うことができ、それが大阪市のあり方を一人ひとりが考える機会になったのだと思います。
それは市民だけでなく、内部の人も。