「うちは成長意欲の高い人を採用しているから、どう成長していくかは本人に任せている」
という話を、あるベンチャー企業で伺いました。
採用が成功しているということに感心しつつも、「それではその成長意欲を活かしきれていない」というのが私の答えでした。
目標・夢・理想の状態というものは、周囲と共有することでより具体的になっていきます。
それによって、「言ったからにはやらなくては」という気持ちが生まれますし、協力者が現れることも、助言をくれる人も現れます。
そして時には「それなら、こういう道もあるよ」と新しい可能性を広げてくれる人も出てくるでしょう。
残念なことに、就職活動では大きな夢や志を口にしていた学生が、入社して半年もするとそんな想いを持っていたこと自体も忘れてしまいます。
職場の上司が育成者として行うことの一つが、理想像を共有することです。
「この部下は将来どうなっていきたいのか」「上司としてどうなって欲しいのか」ということを。
十分に人生経験を積んだ人ならば、今後どうなっていくかは自分たちで考えることができるでしょう。
若手社員でも広い視野を持って考えられる人はいますが、決して多くはありません。
狭い視野の中で描いた理想像は偏りのあるものになってしまいます。
初めは曖昧なことがほとんどでしょうが、だからこそ、色々な道を示すことが本人の可能性を広げていきます。
より高い視点で何かを目指すことが本人の意志となり、成長を加速させます。
大きな志は必ずしも達成できるとは限りませんが、それを達成しようとするからこそ自分の限界を超えることにつながるのです。
そして、何かを実現したい、理想を追求したいという 想いや志が周囲を動かし、大きな力となっていきます。
先行きの見えない社会においては、理想像を描くことはなかなかに難しいものかもしれません。
しかし、そんな時代だからこそ、ブレない生き方のためには理想像を持つことが重要です。
理想像を育むことが自律的な社員を生む一歩となるのです。