管理職研修などで、「部下育成で大事なこと、意識していることは?」という質問を投げかけることがあります。
そこで返ってくるのは、
・ 実例でわかりやすく説明
・ すべてを伝えようとせず、ポイントを絞る
・ 相手のレベルに合わせた教え方をする
・ うまくできたところを褒める
どれも間違いではありません。
むしろ、全て大切なことです。
ただ、このような回答を聞いていて感じることは、育成 = 業務指導の域にとどまっているということです。
業務を教えることはするが、「この人を育てよう」という思いまでは持てていないと。
「育てる」と「教える」。
もちろん、育てるためには教えなくてはならない部分もあるので、両者は近しいものではあります。
しかし、似て非なるものであると私は考えます。
では、育てようとする人と教えるだけの人の違いは何なのか。
それは視点だと思います。
育てようとする人は相手に対して長期的に「どうなって欲しいか」を考え、ただ教えるだけの人は短期的に「これができて欲しい」と考えます。
根本はその人と一人の“人間”として向き合うのか、それとも“人手”と考えているのかの違いかもしれません。
これは企業に限らず、学校教育の現場にも言えることだと思います。
ただ公式を教えるだけなのか、数学を通じて考える力を身につけて欲しいのか。
受験に受からせることを考えているのか、充実した大学・社会人生活を送って欲しいと考えているのか。
視点の違いが、メッセージの違いに現れます。
思えば、「いい先生だったな」と思える人ほど、蛇足と思えるような雑談が多かったかもしれません。
そんな先生ほど、生徒に対して「将来こんな人間になって欲しい」という想いが強かったのかもしれません。
人を育てようとする想いが、つまり相手の将来を考える気持ちが、信頼関係を生み、そして組織へのエンゲージメントを生み出します。
ある経営者の言葉