次世代リーダー研修を実施する際に見落としがちなことが、“学びを職場で活かせる環境づくり”だ。
「職場のメンバーを巻き込んで仕事をする」といったことを研修内で宣言しても、なかなか職場で実践できる機会がない。
もちろん、周囲から言われるまで待っているような受身な姿勢は問題である。
しかし、それ以上に問題なのは現場の上司が研修でのメッセージを理解していないことだ。
例えば、次世代研修の目的が「周囲を巻き込むリーダーシップを身につける」だとしよう。
研修で火がつき、「職場でより主体的に仕事を進めよう」と決意した社員がいるとする。
しかし、もとが主体的でなかったために、その決意は強固なものとは思えない。
そんなときに、現場の上司が人事と育成目標を共有し、研修での学びを理解していれば、リーダーシップを必要とする業務を与え、実践の場を得る。
うまくいくこともあれば、それ以上に失敗することもあり、その経験が大きな学びとなっていく。
経験の中らから本当のリーダーシップが芽生えていく。
しかし、もし集合教育を展開する人事と、現場の上司が本人に期待するレベルが違っていたら、「いや、そんなことより今の業務を続けてくれ」と上司から言われ、研修での学びどころか、研修で学ぶことの意欲も減退してしまうだろう。
また、上司の態度が「勝手にやってくれ」という ものであったとすると、自分の決意は歓迎されていないものだと認識し、その決意は簡単に後ずさりしてしまうことだろう。
現場と人事部門の齟齬は様々な研修でも起こり得ることだが、この「次世代リーダー研修」という分野においては特に留意する必要がある。
管理職研修や新入社員研修とは違い、今の業務で求められる知識や能力を養うものではないためだ。
「今求められていなければ、やる必要はない。」
そんな言葉で片付けられないのが育成であろう。
育成とは、今求められることを行うのではなく、将来求められる人材になるために行うことであるのだから。