組織や人の問題というのは、色々な原因が絡み合っていて、「原因はコレ!」「あの人が悪い」みたいな原因特定ができないことが多いんですよね。
と言うより、意味がないと言うか。
にもかかわらず、「犯人は人事部」なんて、決め付けたタイトルを書いてしまったのか。
それは、人事が「良かれ」と思ってやっていることが、実は望む姿とは間逆の方向に導いてしまっている。
そういったことがあることを、知って欲しかったからです。
先日、ある企業で部長研修の打ち合わせをしていたら、
「新規領域の部署と既存領域の部署は分けた方が良いかもしれない」
という意見を頂きました。
既存から新規領域に異動が多くなったことで、既存領域の負担が大きくなってしまっている。
結果、新規領域の人たちの間に“溝”ができている気がするとのことでした。
なるほど。
そういう事情もあってのご意見だったのですが、打ち合わせで決まったことは、
「だからこそ、一緒にやった方がいいだろう」
という結論です。
全社を俯瞰することが研修目的であったことも一つですが、
「“溝”ができているなら、それを埋めるチャンスでもある」
というのが大きな理由でした。
全社戦略に対して、新規領域を扱う部署はどうミッションを捉え、何に重点的に取り組むのか?
既存領域は何を重点テーマにするのか?
全社的な戦略遂行の肝は何で、お互いに協働することは何なのか?
そういったことを話すうちに、だんだん相互理解が進み、“溝”と思われていたものが埋まっていきます。
こういう趣旨や進め方はオーソドックスなのですが、意外と敬遠されることがあります。
それがまさに、「人事部が犯人」といった部分につながります。
セクショナリズムは一例に過ぎませんが、人事部は、組織の現象的な問題に過敏になっていることが少なくありません。
腫れ物に触るようにというか、当たり障りなく対応しようとした結果、結局何も変わらなかったり。
長期的にはその問題を助長させていることが少なくありません。
もっと言ってしまうと、本当は“溝”なんてないのに、“溝”を作ってしまうこともあります。
色々な人事施策で「階層ごと」「事業別」「男女分け」みたいなことをやっているうちに。
他にも「中途と新卒」「プロパーと出向組」のように、意味があるのか、違いがあるのかわからない分け方で、人を見ているうちに、本当に違いがあるように感じてきてしまいます。
自分の考えにあった情報だけを集めてしまいがちである“確証バイアス”なるものが働いて。
そして、そういった周囲からの見られ方というのが本人にも伝わり、自分たち自身もその認識が刷り込まれていってしまう。
はい、同じ部署内でのセクショナリズムのできあがりです。
ただ、問題なのは、これが盲点であるということ。
つまり、人事の人たちも気づいていないんですよ。
セクショナリズムを助長していることに。
なぜか?
それは、「良かれ」と思ってやっているからなんです。
会社のためと思っていることだから、まさか悪い影響があるなんて思いもしない。
家庭に置き換えると、子供のためと思っていることが、実は「過保護」であるかのように。
もちろん、このさじ加減は難しいところです。
人から「過保護」と言われていることがあっても、長期視点に立つと良い影響を与えている育て方もあるように。
人事は現場のことを良くわかっていると思っていても、実は見えていないことも多くあります。
これも、子育てと一緒ですね。
繰り返しですが、「セクショナリズムの犯人は人事部」というのは一例です。
セクショナリズム以外にもこういった現象的な問題は多くありますし、各部のトップ同士の関係が大きな影響を与えていることは事実です。
しかし、今回、あえてこのトピックを取り上げたのは、「セクショナリズムは現場に原因がある」と自分たちの影響を棚上げしている人事の方が多いと感じるからです。
「うちの会社、ほんと部門間連携が悪くて。もっと情報共有して欲しいんですけどね。。。」
って、他人事じゃないですからね。
変革フェーズにある企業では、様々な人事施策を打つと思います。
今回つらつらと書いてきたことにならないようにするために、意識して欲しいことは3つです。
1.「良かれ」と思ったことをやるときこそ、複眼で考える
2.「当たり障りないようにやっていることは、やらないのと同じ」と認識する
3.現場に出向いて生の声を聞く
「3.現場に出向いて生の声を聞く」なんかは当たり前のようにも感じますが、大事です。各部署の声を聞いてみると、「“溝”があると思っていたけど、みんな想いは一緒なんだ」ってことに気づけることもあります。
そういった、人事のアクションが部署間の橋渡しにもなっていきます。