先日、ある経営者と、「○○○できる人を育てることが、うちのHRミッションだから」という会話になりました。
ものすごく大事な考え方だと、感心させられました。
同時に『HRミッション』という言葉を、僕から出せなかったことに悔しさも感じました。
多くの企業でミッションという言葉が掲げられています。
会社の使命、目的、役割、存在意義などと訳されますが、要は「何のために事業を行っているのか」です。
「その事業を行うことで、どのような価値を社会に提供しているのか?」とも言い換えられます。
それをHuman Resourceの観点から考えているのが、『HRミッション』です。
つまり、「その事業を行うことで、どのような人材を社会に提供しているのか?」ということです。
自社の事業を運営する上で必要なスキル・知識、視点、考え方、動き方。
それらが自社だけで通用するものではなく、会社という枠を外れたとしても、勝負できる。
そういう人材を育てようとする、世の中に生み出そうとする企業使命が『HRミッション』です。
人材輩出企業の代表格であるリクルート。
創業者の江副浩正氏の頭の中には、『HRミッション』という言葉は無くとも、同じような概念があったのだと思います。
まだ聞き慣れない言葉ですが、今後、この『HRミッション』は様々な組織活動において重視されるテーマになるでしょう。
江副浩正氏が生きた時代以上に人材の流動化が激しい時代。
一生一つの会社にいることは、一層稀有なことになっていきます。
そうなると、自社でしか使えないスキルをいくら身につけようと、それは足枷にしかならなくなってしまいます。
ポータブルスキルなスキルが身につけられるかどうかが、その企業で働く魅力の一つになるでしょう。
「どのような人材を社会に提供しているのか?」=「うちに入社するとどんな人材になれるのか」が。
多分、いつの間にか、『うちのHRミッションは○○です』と採用説明会で話すことがブームのようになっている気がします。
冒頭の経営者は、組織を創れる人を育てたいと考え、いずれ独立することも前向きにとらえています。
そういう人を育てられないと、現経営層がいなくなったときに自社自体が立ち行かなくなってしまうとわかっているからです。
そして、各企業がどんな組織・社会でも通用する人材を育てる姿勢が広がることで、結果的に自社にも良い人材が集まると考えています。
この考え方は、企業の経営者だけでなく、部署長などの管理職も持つべき考え方です。
一つの企業どころか、一つの部署に留まることはほぼ無いでしょう。
異動のある時期だと思いますが、「うちのエースを引き抜かれた」「これだけ人材を削減されたら例年と同じようにできない」といった不満の声が上がることがあります。
これは、その管理職に先述のような考えが無く、自分の組織だけの部分最適の考えに陥ってしまっているからです。
「自分の部署にきたら、こういう考え・知識を身につけさせることで、会社に貢献する」。
そういった数字以外の貢献も、管理職には求められることです。
もちろん、その一方で「全社として、こういう共通するものがあるよね」という感じのものも持っていたいものです。
決して俗人的なものではないものが。
それが組織風土を作り、連帯感を生み出す種にもなり、そして全体視点で物事を考える土壌になります。